ほんず内閣総理大臣

25
3月

湯呑

朝からちびちび呑んで
 
 婆様に小言を言われ

聞いてるんだか聞いてないんだか

 少し困った顔をして、また一口呑んで

手ぬぐいを頭にかぶり、畑へ向かう

 岩木山の残り雪で豊作を占い

真っ暗になるまで働き

 テレビの前で、真っ黒な手で酒を注ぐ

イヤホンを耳に、水戸黄門

 途中で目をつむり船を漕ぎ

「終わったよ」と婆様に背中をたたかれ

 無言でまた一口酒を呑み

家族を見渡して少しだけ笑い

 よろよろと寝床へ向かい、パタンと戸を閉める

テレビの前に残された「長寿」と書かれた茶色の湯呑

 ずっと前の敬老の日に買ってあげたもの

毎日大事に使ってくれていた

 何も言わなかったけれど

両手で包むようにして呑む姿は
 
 大切な家族を守ろうとしているようにも見えた

今では酒が注がれることもなくなった湯呑

 仏壇の中にひっそり納まっている

ひと回り小さい

 同じ湯呑と一緒に

※じい様の十三回忌の時に書いたものです。

なぜかさっき、実家から
「おめぇ書いたのが?変な詩みて~だのが仏壇の奥がら出できたよ」
と電話があり、思いだしながら書きました。

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